「クマは山奥にいるもの」——そんな常識が、いま日本各地で崩れつつあります。2025年度、クマによる人身被害は統計開始以来最悪を記録し、2026年に入っても住宅地や学校の近くでの出没が相次いでいます。この記事では、クマによる人への被害と暮らしへの影響を、環境省のデータをもとに紹介します。秋の旅行やハイキングを計画している方も、ぜひ参考にしてください。
人的被害:2025年度は過去最悪の238人
環境省の速報値によると、2025年度のクマによる被害者は全国で238人、そのうち13人が死亡しました。それまで最多だった2023年度(被害219人・死亡6人)を大きく上回り、年間の死者が10人を超えたのは統計上初めてです。統計の起点である2008年度の55人と比べると、およそ4.3倍に増えています。

被害は特に東北地方に集中しています。2025年度は秋田県が67人と最も多く、岩手県40人、福島県24人と続き、東北6県だけで全国の約3分の2を占めました。月別では10月が最も多く、ちょうど今の季節が一年で最も危険な時期にあたります。

2026年度に入っても被害は続いています。4月には岩手県紫波町で、5月には岩手県八幡平市や山形県酒田市で、山菜採りの最中にクマに襲われたとみられる方が亡くなっています。
生活被害:「山に入らなければ安全」ではなくなった
近年の大きな特徴は、人を恐れずに市街地の近くで行動する、いわゆる「アーバンベア」が増えていると指摘されていることです。クマの出没件数は2025年度に約4万9,900件と、4年前(2021年度・約1万2,700件)のおよそ4倍になりました。

学校が休校に
影響を最も強く受けているのが学校です。2026年6月、人口約50万人の栃木県宇都宮市では、中学校の敷地や市中心部の商業地区でクマが確認され、市内すべての公立小中学校が休校になりました。福島県喜多方市では小学校の校庭をクマが横切り、登校中の児童を近くの住宅や寺に避難させて屋外活動を中止しています。文部科学大臣も、危険と判断した場合はためらわず休校にし、オンライン授業も検討するよう呼びかけました。秋には山梨県の小学校で林間学校が中止されるなど、影響は今も続いています。
観光・交通・農業にも
出没により道路が一時通行止めになったり、京都府の天橋立のような観光地でクマが捕獲されたりと、観光への影響も懸念されています。農業被害も深刻で、2024年度のクマによる農作物被害額は約5億1,900万円にのぼります。
旅行者・住民ができること
クマの多い地域を訪れるときは、次のポイントを意識しましょう。

- 出発前に自治体や環境省の出没情報を確認する
- 鈴やラジオなどで音を出し、人がいることを知らせる
- 早朝・夕方の山道や河川敷では一人で行動しない
- 生ゴミや果物、キャンプの食料を屋外に放置しない
- 遭遇したら走って逃げず、クマから目を離さずにゆっくり離れる
- 襲われたらうつ伏せになり、両手で首の後ろを守る
まとめ
クマの被害は、命を奪うだけでなく、子どもたちの学びや地域の経済、日々の安心まで脅かしています。もはや山の中だけの問題ではありません。正しい情報を知り、一人ひとりが身近な対策をとることが、人とクマが共に暮らしていくための第一歩です。
※数値は環境省の速報値(2026年時点)にもとづきます。最新情報は環境省や各自治体の発表をご確認ください。
参考:環境省「クマ類による人身被害について[速報値]」「クマ類の出没情報について[速報値]」、日本経済新聞、NHK、CNN.co.jp ほか
